現役看護師が教える熱中症対策12選!子どもから高齢者までの対処法を徹底解説

医療

「暑い日に外で過ごすので、熱中症の対策が知りたい」
「子どもが暑さに弱いので心配]
「高齢者は熱中症になりやすいって聞いたけれど、対策がわからない」

こんな不安を抱えている方も多いでしょう。対応が遅れると死亡することもある熱中症。
対策を知って、安全に夏を乗り切りたいですよね。

そこで本記事では看護師歴19年の筆者が、

  • 熱中症のさまざまな対策12選
  • 子どもや高齢者が熱中症になりやすい理由・対策
  • 応急処置の方法
  • 子どもから高齢者までの年代別の事例

などについて徹底的に解説します。ぜひご参考にしてください。

熱中症とは?軽度から重度までの症状を細かく解説

熱中症とは暑さによって体温調節のバランスが崩れ、汗をかいて体内の水分や塩分が不足することで起きる、めまいや頭痛などの症状のことです。

些細な変化も見逃さず、異常があればすぐに対応できるようにしましょう。

1.熱中症の軽度から重度の状態で起こる症状とは

熱中症の症状は軽度、中等度、重度に分類されます。症状は重症度によって変わり、人によって表れ方も違います。
以下の症状の一覧表を参考にしつつ「おかしいな」と思ったら、すぐに応急処置をしてください。

※応急処置の方法はこちら

■熱中症の重症度別の症状

重症度症状
軽度・めまい、立ちくらみ
・気分が悪い・ぼーっとする
・汗が止まらない
・足がつる
・筋肉の痛み
・手足のけいれん
・手足、唇のしびれ
・脈拍が速く弱くなる
・呼吸の数が増える
・顔色が悪くなる
中等度・頭痛
・吐き気、嘔吐
・体がだるい
・体に力が入らない
・水分補給ができない
・全く汗をかいていない
・つじつまが合わないことを言う
・皮膚が青白くなる
重度・意識がない
・反応が鈍い
・皮膚に触ると熱い
・皮膚が赤く乾いている
・うまく歩けない
・ろれつが回らない
・全身の痙攣

2.サクッと30秒で解説!熱中症の症状が起こるメカニズム

熱中症になると、立ちくらみ痙攣などの症状が起こります。

立ちくらみなどが起こる原因は、熱を下げるために皮膚の表面に血液が集まることで、脳や心臓などへの血流が減るためです。

痙攣などが起こる原因は、大量に汗をかいて体内の水分や塩分が排出されてしまうためです。

以下にわかりやすく図解したので、ご覧ください。

  、

熱中症を引き起こす3つの原因

熱中症には「環境・体・行動」の3つの原因があります。

どんな状況が熱中症を引き起こすのか?どんな人が熱中症になりやすいのか?
原因を知って、適切な対策をとりましょう。

1.熱中症になりやすい環境

主に真夏の猛暑日です。暑すぎてクーラーなしでは過ごせない、外に出たくないといった環境です。

また夏以外でも、体が暑さに慣れていない初夏の時期なども含まれます。

東京消防庁の調べでは、令和6年(6~9月)に救急搬送された方は気温が28℃から35℃湿度は50%から80%の範囲で多かったことがわかっています。

以下に熱中症になりやすい環境についてまとめましたので、お役立てください。

  • 気温が高い            
  • 湿度が高い
  • 日差しが強い
  • 風が弱い            
  • 照り返しが強い
  • 風通しが悪い
  • 熱帯夜の翌日
  • キッチンなど熱いものがある場所
  • 急に暑くなった日(5月の暑い日・梅雨の晴れ間・梅雨明け時などに多い)

2.熱中症になりやすい年代や体の状態

子ども、高齢者、体調が悪い人などです。

体温調節のバランスが崩れやすかったり、汗をかきにくかったりなど、さまざまな理由から熱中症になりやすいです。

特に高齢者が最もリスクが高く、東京消防庁は令和6年(6~9月)に熱中症で救急搬送された方の約6割が65歳以上と発表しています。

以下に熱中症になりやすい年代と体の状態についてまとめましたので、ご参考にしてください。

  • 子ども(7~8才以下)
  • 高齢者(65歳以上)
  • 肥満
  • 体が暑さに慣れていない
  • 脱水ぎみ(二日酔い、下痢、嘔吐をしている)
  • 栄養状態が悪い(食欲がない)
  • 寝不足
  • 持病がある(高血圧、糖尿病、心臓病など)

3.熱中症になりやすい行動

暑い場所で過ごしたり、水分や塩分補給が思うようにできない状態だったりすると、熱中症になる危険性が高まります。

  • 暑い日に屋外作業や運動をする
  • 暑い場所で長時間過ごす
  • 水分、塩分補給ができない状態で過ごす

熱中症の対策12選!危険な暑さから命を守る方法

熱中症には、さまざまな対策が必要です。

水分・塩分補給をする、エアコンを使うなど一般的によく知られている対策もありますが、あまり知られていない大切な対処法も多くあります。

熱中症を予防して、厳しい夏を乗り切ってください。

1.のどが渇く前や就寝前!適切なタイミングで水分補給をする 

1日に必要な水分量は1.2~1.5Lです。夏場はたくさん汗をかくので、1.5L〜2Lを目安に摂取しましょう。

のどの渇きは既に水分が不足しているというサイン。のどが渇く前のこまめな水分補給が重要です。

日中の活動以外でも、睡眠中や入浴中は約500mlもの水分が失われるといわれています。起床時、就寝前、入浴前後にコップ1杯(100~200ml)の水分摂取をしてください。

飲み物の種類は、ミネラルが豊富な麦茶がおすすめです。

激しい運動や屋外作業などで多量に汗をかいた場合は、成分が体液に近く吸収が早いスポーツドリンクの補給が望ましいです。

ただしスポーツドリンクは糖分が多いので、過剰な摂取は避けましょう
しっかり食事をとっていれば糖分が不足することはないので、通常の水分摂取は水や麦茶で充分です。

また運動時は体から失われた水分量(汗の量)を補う必要がありますが、

  • 体格
  • 気象条件
  • 運動量

などによって摂取量が変わります。そのため、のどの渇きに応じて自由に補給するのが最適です。

スポーツドリンクは、なければ自作でも良いです!

【作り方】
水500mlに塩1g、砂糖20gを入れて混ぜます。水で溶けにくい場合は、少量のぬるま湯でといてから水を足してください。

※雑菌が繁殖するため、作った当日に飲み切りましょう。

2.塩分補給は毎日の食事でOK!多量に汗をかいたら追加で補給する

日々の食事をしっかりとっていれば、必要な塩分は摂取できるので問題ありません。

ただ多量に汗をかいた場合は、水分だけを摂取すると体内の塩分が薄まり熱中症を引き起こす原因となるため、塩分補給もおこないましょう。

手軽に塩分補給できる食べ物として、

  • 塩昆布
  • 梅干し
  • 塩分タブレット

などをおすすめします。多量の発汗後に1~2個程度の摂取が望ましいです。

3.熱中症になりにくい食事をとる

熱中症予防には、

  • 食事を抜かない(特に朝食)
  • 主食、主菜、副菜をそろえたバランスの良い食事をとる

ことが大切です。

1食分に含まれる水分量は約500ml。食事に含まれる水分はゆっくりと消化され体内に長く残るので、脱水予防に効果的です。

朝食を抜くと熱中症のリスクが高くなります。食事からの水分補給がない上に、就寝中の発汗で体内の水分と塩分が減少しているからです。

また食事をとらないと血糖値が下がり汗の量が少なくなるため、熱を逃がしにくくなります。朝食はかかさず、しっかり食べるようにしましょう。

熱中症予防に効果的な栄養素は、

  • たんぱく質
  • ビタミンB1
  • ビタミンC
  • クエン酸カリウム
  • タウリン

などです。

以下にそれぞれの効果、多く含んだ食品の一覧表があるのでご覧ください。

栄養素効果食材
たんぱく質・筋肉を増やす
・血管内へ水分を引き込む
・肉
・魚
ビタミンB1糖質をエネルギーに変える・豚肉
・大豆製品
・ナッツ類
・ほうれん草
ビタミンC免疫力を上げる・パプリカ
・ゴーヤ
・きゅうり
・ピーマン
クエン酸乳酸(疲れの原因)の発生を抑える・梅干し
・酢
・レモン
・グレープフルーツ
カリウム尿を出して体温を下げる・海藻
・芋類
・スイカ
・バナナ
タウリン・筋肉疲労を回復する
・深部体温(内臓や脳の温度)を下げる
・貝類
・いか
・たこ
・栄養ドリンク

夏野菜は熱中症予防に効果的。
たくさん食べましょう!

他にも、香味野菜のみょうが、ねぎ、大葉などは食欲増進の効果があるので、積極的に取り入れてくださいね!

4.睡眠をとり体調を整える

睡眠中は体温が低くなります。
寝不足になると睡眠中に体温が下がりきらず翌日の体温が高くなるため、体温調節のバランスが崩れてしまう可能性があります。

寝室が暑いと寝苦しく睡眠の質が落ちて体温が下がりにくくなってしまうので、睡眠中もクーラーや扇風機はつけっぱなしにしましょう。

接触冷感(触ると冷たく感じる生地)の寝具を使うのもおすすめです。

5.冷却グッズは効果的に冷やせる体の部位に使用する

冷えピタやアイシング用の保冷剤などは、太い血管が走っている

  • 脇の下
  • 首の左右
  • 鼠径(足の付け根)

を冷やすと血液の温度が下がりやすくなり、効果的に体を冷やすことができます。

ネッククーラーや首に巻く冷却タオルは、理にかなっているのでおすすめです。

他にもハンディファン、ボディーシートなども皮膚表面から熱を発散するのに有効なので、顔や体の熱いと感じる部分に使いましょう。

6.暑さに負けない体づくりをする

暑さに対応できるように、夏に向けて体づくりをしましょう。体が暑さに慣れていないと体温が上がりやすく、汗に含まれる塩分量も多くなり、熱中症の危険性が高まります。

気温が上がる前の5月頃から適度な運動を始めてください。体を動かすと体内で熱が作られ、体が暑さに慣れてきます       

個人差はありますが、暑さに慣れるまで2週間程は必要です。

以下に暑さに慣れるための運動、実施時間、頻度についての表があるのでご覧ください。

■暑さに慣れるための運動・実施時間・頻度

運動などの種類時間頻度
ウォーキング1回30分週5日
サイクリング
筋トレ・ストレッチ週5日~毎日
38~40°の湯船につかり汗をかく
(普段シャワーのみの人)
1回20分以上2日に1回

・ウォーキング➡通勤時に遠回りして駅まで歩く

・サイクリング➡自転車で買い物に行く

など、普段の生活の中に無理のない範囲で取り入れると効率的です!

参考:熱中症ゼロへ

7.直射日光を避ける・日差しをさえぎる

暑い日の屋外では帽子や日傘の利用はもちろんですが、なるべく日影にかくれるようにしましょう。

日向と日陰は気温はほぼ同じですが路面温度に差があり、炎天下では20°くらい違うことも暑い日に外で過ごす際は、日陰をうまく利用してください。

また街中にある「クーリングシェルター(市町村が指定する冷房設備を備えた施設)」を利用するのもおすすめです。

環境省は対象施設にクーリングシェルター・マークの掲示を推奨しているので、街中で見かけたら遠慮なく利用しましょう。

こちらがクーリングシェルターマークです!
色は施設によって違う場合があります。

利用料は無料で、中には飲み物を提供している施設もあります。外出する際は事前に設置場所を調べておくと安心です。

環境省熱中症予防サイトに各都道府県のクーリングシェルターの設置場所が掲載されているので、参考にしてください。

■環境省熱中症予防サイト https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_shelter.php

8.温度と湿度を適切に調整する

室内ではエアコンを積極的に使用し、室温は28℃、湿度は40〜60%に保つように心がけましょう。

室温が低すぎると外気との温度差で血圧が変動したり、自律神経が乱れて体温調節のバランスが崩れるおそれがあるため、適温に設定することが重要です。

エアコンがない場合は、扇風機を使用してください。
霧吹きで体に水をかけ、扇風機の風にあたると熱を逃がしやすくなります。

9.風通しをよくして空気の流れをつくる

室内では風通しをよくすることを心がけましょう。空気の通り道がないと熱がこもりやすく、熱中症の原因になります。

  • リビング
  • 寝室
  • 浴室
  • キッチン

などは扇風機や換気扇を回す時々ドアを開けるなど風を循環させることが重要です。

10.通気性・速乾性に優れた服を着る

速乾性・通気性に優れた、

  • 接触冷感(触ると冷たく感じる生地)
  • 綿

などの素材の服が有効です。汗を素早く吸い取り蒸発させてくれるので、体の熱を効果的に逃がせます。

また黒い服は熱を吸収しやすいので、外出の際はおすすめしません。熱を吸収しにくい白い服がよいでしょう。

11.こまめに休憩する・気軽に休める環境づくりをする

暑い日にスポーツや仕事をする際は、こまめに休憩をとってください。

部活中や仕事中に熱中症の症状が現れても休みたいと言いだせず、症状が悪化したケースがたくさんあります

中には後遺症で植物状態になってしまったり、死亡してしまった事例も。熱中症になる前に、こまめに休憩をとりましょう。

また体調不良の際に、誰もが気軽に休めるような環境をつくることが重要です。

12.熱中症になりやすい人を気にかける

  • 子ども
  • 高齢者
  • 障害者

などは熱中症のリスクが高いため、周囲の人が声かけをしたり、些細な変化も見落とさないように注意する必要があります。

熱中症になりやすい理由は、

対策は、

をご覧ください!

子どもから高齢者まで!熱中症になりやすい人とその理由

子ども(7~8才以下)、高齢者(65歳以上)、障害者などは、さまざまな要因から熱中症になりやすく注意が必要です。

なぜ熱中症になりやすいのか?原因がわかっていれば、対策も理解しやすくなります。
熱中症に弱い方々を守るために、学んでみましょう。

1.子ども(7~8才以下)が熱中症になりやすい理由

体温が高く汗の量が多いため、脱水になりやすい傾向にあります。

体温調節の機能も未発達で大人に比べて体温が下がるのに時間がかかり、じっとしているだけで熱中症になることも。

また身長が低いため地面からの照り返しを受けやすく、気温32.3℃の場合は体感温度が35℃以上にもなります。

体調の自己管理も難しく、体調不良を正確に伝えられないのも大きな原因です。

2.高齢者(65歳以上)が熱中症になりやすい理由

若い人に比べ体内の水分量が少なく、老化により暑さやのどの渇きを感じにくくなっています

トイレが頻回になるのを避けようと、水分補給量が少なくなってしまう方も多いです。食が細く栄養不足になりやすいのも特徴。

また体温が上がっても汗をかく力が弱いため、熱を逃がしにくいです

認知症や理解力の低下などで、体調の自己管理や体調不良を訴えにくいのも原因です。

3.障害者が熱中症になりやすい理由

視覚障害の方は、日陰がわからず日光を直接浴びる時間が長くなってしまうことがあります。車いすを利用する方は、体と地面が近いため照り返しを受けやすいです。

知的障害の方は体調の自己管理が難しく、体調不良を正確に伝えられない方が多いため、熱中症のリスクが高まります。

4.心臓病、腎臓病、糖尿病などの病気の方が熱中症になりやすい理由

利尿剤(尿を多く出す薬)を服用している方は水分が多く排泄されるので、脱水を起こしやすくなります。

病気によって汗をかきにくくなってしまったり、体温の上昇に体の反応が追い付かなかったりと、熱中症になりやすい原因を抱えています。

5.体調が悪い人が熱中症になりやすい理由

睡眠不足疲れがたまっている人は、体温調整のバランスが崩れやすく熱中症になる危険性が高まります。

下痢嘔吐をしている方は、体内の水分や塩分が失われ脱水になっている可能性があります。

またアルコールには利尿(尿を多く出す)作用があるため、二日酔いの方も脱水になりやすいので注意が必要です。

熱中症リスクが高い子どもと高齢者の対策について解説

熱中症になるリスクが最も高いのは、子ども(7~8才以下)高齢者(65歳以上)です。

この章では、子どもと高齢者ならではの熱中症対策について解説します。
熱中症になりやすい方が安全に過ごせるように見守り、対応していきましょう。

1.子どもの熱中症対策

子どもの対策は年齢によってかわります。

0才児は外出の際にベビーカーを使いますが、シートの高さが40~50cmと地面から近いため、大人の体感温度より2〜3℃高いです。
サンシェードをつけたり、保冷シートをつけたりなどの対策をおすすめします。

また暑さに体を慣らすことも重要です。1才以上は午前中や夕方などの気温が上がりすぎない時間帯に、30分程度外遊びをさせるのも効果的。

遊びの最中には、こまめな水分補給と休憩も忘れずにおこなってください。

年齢別の水分補給としては、

  • 生後6か月頃までは母乳
  • 離乳食が始まってからは麦茶や白湯
  • 幼児以降は、麦茶、水など

がよいといわれています。

激しい運動などで多量に汗をかいた時は、スポーツドリンクをおすすめします。

薄めると電解質(塩分など)の補給がスムーズにおこなえなくなるので、薄めずに与えてください
離乳食を終えたらスポーツドリンクの摂取は可能です。

さらに子どもは自分の体調不良をうまく言葉で伝えられないため、

  • 汗のかき方
  • 泣き方
  • 顔色
  • 体温の変化

などを観察し、異常があればすぐに対応しましょう。

 

2.高齢者の熱中症対策

老化によりのどの渇きを感じにくくなっていたり、トイレが頻回になるのを避けたりするため、水分摂取量が不足する傾向にあります。周囲の方が摂取を促し、気にかけてください。

食が細い方は、ドラッグストアなどで販売している栄養補助食品を摂取するとよいでしょう。病院での処方も可能なので、受診時に医師に相談するのをおすすめします。

またクーラーが嫌いな方も多いので必要性を説明して使用を促すか、家族などが管理して適切に使用しましょう。

認知症や理解力の低下で体調の自己管理が難しい場合は、周囲の方が体調の変化を気にかけ、異常があればすぐに対応することが重要です。  

今日の熱中症リスクを知ろう!熱中症対策の3つの指標

熱中症対策には、熱中症のリスクをわかりやすく示す3つの指針があります。日々の生活で活用して、適切な対策ができるようにしましょう。

1.暑さ指数(WBGT)

暑さ指数(WBGT)とは、

  • 気温
  • 湿度
  • 輻射熱(日射しを浴びたときに受ける熱、地面、建物、人体などから出ている熱)

を取り入れた温度の指標です。

環境省熱中症予防情報サイトで、春から秋にかけて毎日発表しております。

■環境省熱中症予防情報サイト https://www.wbgt.env.go.jp

また暑さ指数(WBGT)に応じて「日常生活に関する指針」「運動に関する指針」があり、生活や運動時の注意事項と、どの程度熱中症のリスクがあるのかを知ることができます。

以下に各指針の表がありますので、ご参考にしてください。

【日常生活に関する指針】

暑さ指数注意すべき活動の目安注意事項
危険(31以上)全ての生活活動でおこる危険性・高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい

・外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する
厳重警戒(28以上31未満)外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する
警戒(25以上28未満)中等度以上の生活活動でおこる危険性運動や重労働時には定期的に充分に休憩を取り入れる
注意(指数25未満)強い生活活動でおこる危険性危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険がある

引用:環境省熱中症予防情報サイト

【運動に関する指針】

気温暑さ指数熱中症予防運動指針
35℃以上31以上運動は原則中止・特別の場合以外は運動を中止する。

・特に子どもの場合には中止すべき。
31℃以上35℃未満28以上31未満厳重警戒(激しい運動は中止)・熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。

・10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。

・暑さに弱い人は運動を軽減または中止。
28℃以上31℃未満25以上28未満警戒(積極的に休憩)・熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。

・激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。
24℃以上28℃未満21以上25未満注意(積極的に水分補給)・熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。

・熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
24℃未満21未満ほぼ安全(適宜水分補給)・通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。

・市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

引用:環境省熱中症予防情報サイト

2.熱中症警戒アラート

暑さ指数(WBGT)が33を超え、熱中症の危険性が高くなると予測された際に発表されます。スポーツは原則禁止です。

気象庁と環境省が共同で発表するので、環境省熱中症予防情報サイトや、気象庁の公式サイトで確認できます。

■環境省熱中症予防情報サイト https://www.wbgt.env.go.jp

■気象庁 https://www.jma.go.jp/

3.熱中症特別警戒アラート

熱中症警戒アラートよりも、さらに一段上のアラートです。

暑さ指数(WBGT)が35を超えると予測された場合に、環境省から発表されます。スポーツは原則禁止で、徹底した熱中症対策が求められます。

環境省熱中症予防情報サイトで確認できます。

■環境省熱中症予防情報サイト https://www.wbgt.env.go.jp

熱中症の応急処置について解説!自分と身近な人を守ろう

熱中症になってしまった場合は、命を守るために迅速な処置が求められます。もしもの場合に備えて、応急処置の方法を学びましょう。

1.熱中症の応急処置の手順

熱中症の応急処置は、症状の程度などによって変わります。その場で対処して回復するのか、救急搬送が必要なのか、見極めが重要です。

厚生労働省のサイトでは、熱中症の応急処置の手順をわかりやすく公開しています。
周囲の人が熱中症になった場合は、以下のチェックリストにしたがって処置を進めていきましょう。

※熱中症の重症度別の症状はこちら

 引用:厚生労働省

2.熱中症の回復に有効!経口補水液の塩分はスポドリの2.5倍

経口補水液とは、軽度から中等度の脱水状態の際に摂取する補水液のこと。塩分がスポーツドリンクの約2.5倍入っているため、熱中症の回復に効果的です。

熱中症の症状があり、自力で水分補給ができる場合は摂取してください。熱中症の症状がない方が飲むと塩分のとりすぎを招くので、飲まないようにしましょう。

経口補水液がない場合は、自分で作っても良いです!

【作り方】
水1Lに対し、砂糖40g、塩3g
※細菌が繁殖するため、当時に飲み切ってください。

  

現役看護師が対応した熱中症の4つの事例!子どもから高齢者まで年代別に解説

現役看護師が対応した熱中症の事例を紹介します。小学生、高校生、成人、高齢者と、幅広い年代の事例と対策を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.小学生のケース(体育の授業)

小学1年生の女子。7月初旬の午前で気温は25℃程、校庭で体育の授業中。風邪が治ったばかりで、体調が万全ではなかった

授業中は適宜休憩をとり、スポーツドリンクで水分補給をおこなっていたが、摂取量は少なかった様子

授業の途中で体調不良を感じたため、担任の先生に「疲れた」「休みたい」と数回訴えたが、そのまま授業に参加させられた

その後、顔色が悪くなり床に座り込み、水分摂取が困難だったため救急搬送される。病院で点滴などの処置をおこない、症状が回復し帰宅した。

対策
  • 子どもは自分の症状を正しく言葉で伝えることが難しい。周囲の大人が状態を観察し、異常時は運動を中止することが必要。
  • 病み上がりで水分補給が適切にできていないなど、熱中症のリスクが高い状態だった。水分補給が適切にできているか、周囲の大人が観察する
  • 子どもは身長が低いため地面からの照り返しを強く受ける。可能な限り、日陰や室内で休憩をとる。

2.高校生のケース(部活)

高校2年生の野球部の男子。7月下旬の午前、気温28度、湿度65%程の晴天。暑さ指数(WBGT)は警戒レベル

1時間に1回は日陰での休憩と水分補給あり。途中から頭痛とめまいがあったが、休みたいと言うと怒られるため無理に部活を続けていた

その後意識不明となり救急搬送され、入院となる。

対策
  • 体調不良時に「休みたい」と言える雰囲気ではなく、無理に部活を続けざるをえなかった。誰もが気軽に休める雰囲気作りが必要。
  • 「運動に関する指針」に基づき、休憩は30分に1回はおこなう。
  • 水分補給は好きなタイミングで自由に行えるようにする。
  • グラウンドに打ち水をして地面の温度を下げる。
  • 体調不良の生徒がいないか周囲の大人が気にかける

3.成人のケース(工事現場)

工事現場で働いている30代の男性。6月下旬の午前、梅雨の晴れ間。気温27℃、湿度85%程。

朝食をとらずに出勤して日向で仕事をしており、多量の汗をかいていた。適宜日陰での休憩、水分補給はおこなっていたが、ただの水を飲んでいた

その後、立ちくらみや頭痛が現れる。経口補水液を飲み、クーラーの効いた場所へ移動した。病院を受診し、点滴などの処置をおこない帰宅する。

対策
  • 梅雨の晴れ間で急に暑くなったため、体が暑さに慣れていなかった。毎日軽い運動などをおこない、暑さに慣れる必要あり
  • 朝食を抜くと食事から摂取できる水分や塩分が不足する。
    さらに朝は就寝中の発汗で、水分と塩分が不足している状態。熱中症対策のためにも朝食は必ず摂取する
  • 多量の汗をかいていたため、水分補給はスポーツドリンクが適切。
  • 作業服など衣類は脱いだり緩めたりして熱を発散させる
  • 可能ならテントやプレハブのクールダウンスペースを設置する。

4.高齢者のケース(自宅のリビング)

88歳の女性。8月下旬の晴れ、気温32度、湿度50%程。暑さ指数は危険レベル。リビングでテレビをみていた。

クーラーが嫌いなため付けず、窓も閉め切ったままだった。普段から水分補給量が少なく、暑さのせいで食も細くなっている状況。

近所に住んでいる娘が部屋を訪れたところ、ぐったりして反応が鈍い状態で、自力で歩くのも困難だった。救急搬送され入院となる。    

対策
  • クーラーの必要性を説明して使用を促す。または家族などが管理し、適切に使用できるようにする。
  • 高齢者はのどの渇きを感じにくいため、水分を摂取するよう家族などが声かけをする。また1日に必要な水分量は「ペットボトル3本分」などと、わかりやすいように具体例をあげて説明する。
  • 食が細い方は熱中症の危険性が高まるため、栄養補助食品を摂取すると良い。栄養補助食品はドラッグストア等で購入するか、病院受診時に処方してもらう。

まとめ

熱中症は年齢や性別に関係なく、誰にでも起こりえます。
症状もさまざまで、対応が遅れると障害が残ってしまったり、死に至るケースも。

熱中症になる前にしっかり対策をして、暑い夏を乗り越えましょう。